東京高等裁判所 平成10年(う)2065号 判決
被告人 松島学
〔抄 録〕
考えてみるに、本件における手数料請求行為は、それが正規契約についてのものであるか偽造契約についてのものであるかを問わず、各契約毎に各別の請求行為であるとみられ、偽造契約書の存在が正規契約についての手数料請求のための手段となっているわけでも、またその逆の関係にあるわけでもなく、たまたま両者の手数料合計額が一通の出金伝票に記載され、交付を受けた現金もその合計額となってはいるものの、それぞれの手数料額は明確に区分できるのである。本件は、一個の契約に関して、正規に請求できる金額を不正な手段を用いて水増し請求をし、相手方を誤信させてその全額の交付を受けたというような事案とは異なるのである。してみると、正規の契約にかかる手数料の支払を求めてその交付を受けた点については、欺罔行為がなく、また、それを全体的にみても違法性があるとはいえないから、この部分については詐欺罪は成立しないものと解するのが相当である。
(島田仁郎 下山保男 福崎伸一郎)